おいしい紅茶を飲む前に
 その話が与えた衝撃は、フレディの方に非常に大きかった。顔色を変えて、彼は相棒に詰め寄る。

「公爵。ベニントン公爵か? 王子ってまさか」

「レセプションが開かれていたんだ。聞いたことのないよーな国の王子がロンドン入りしてて、その歓迎がどーたらの―――、おい、聞いてるか? おーい!」


 どこまでを聞いていたのかはわからないが、必要な情報は手に入れたらしい。

走り出した彼を、ぼんやりと見送っている場合ではない。
シェリルとレスリーは、同じタイミングで走り出した。


 歩くつもりで慣れた靴を履いてきて良かった。

新生活のために用意したあの素敵な黒い靴だったりしたら、この速さでは走れない。
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