おいしい紅茶を飲む前に
 フレディの背中を本気で追いかけて、彼らが着いたのはいくつもの馬車の並ぶ、館の裏側だった。

 何かを探して視線を走らせていたフレディは、目指すものを見つけたらしく、一台の馬車に向かって声を張り上げた。


「メレディス!」


「フィデリティ様ですか? そのお声は」

「頼みがあるんだ、メレディス。シェリー」

「はい」


 その強い調子に負けて、シェリルは文句も言わずに彼の伸ばした手に進み出る。

何がなんだかわからないけれど、忘れられていたわけじゃなかったということらしい。

自分が走り出せば、確実についてくると、そんな絶大な信頼があったとの表現が正しいところなのだろうか、これは。
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