おいしい紅茶を飲む前に
 馬車の中から姿を現した人物は、シェリルも一度ならずお近付きの機会のあった、ローダーディル家の執事だった。

執事――なのかどうかは、このフットワークの軽さを思うと、役職は違うものなのかもしれないのだが。

ここにこの人が待機しているとなると、館の中には、お仕えしている伯爵様がいらっしゃる。
あの伯爵様が、ここに。

 ご自分で語っていたように、彼の行くところに事件あり、なのか。


動かぬ証拠を目の前に突きつけられたシェリルは、館の壮大なファザードを見上げる。

公爵殿には同情を差し上げるべきだ。客人はその資質をも考慮に入れて、慎重に選ばなくてはなるまい。
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