おいしい紅茶を飲む前に
彼自身の言葉が本物ならば、銃すら持っていないはずなのだけれど、そんなものがあったところで、ひとりで四人を相手にできるはずもない。

 王子の左隣につけていた男が近付いてきた。彼はまったく姿勢を変えずに、視線だけを動かす。
王子、そしてふたつの扉に。

それは深く、すべてを見通すような。


「おい、おまえ」

「はいはい」

「ここに来て我々の要求を王子に伝えろ。どういう態度を取るのがご自身の為になるのか、考えてもらわねばならないようだ」

「やらないこともないが、立場上この方の側を離れるわけにはいかないんだよ。そちらにお連れしてもいいだろうね」
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