おいしい紅茶を飲む前に
どうしてここに。
なんて質問に答えが返るとは思えなかったのか、彼女はそこまでしか言わなかった。

 そしてどういうわけか、結び目はいとも簡単に解けて、王子のオリエンタルに精悍な顔が、光の中に現れる。

久しぶりのその明るさに、眩しそうに目を閉じ、改めて開き直すと、王子は椅子から立ち上がった。


 メアリーアンに向き合い、ご自分の胸に手を当てて何かを言う。

何か。

「えぇと」

 申し訳なさそうな顔で、メアリーアンはすがるようにフレディを見た。
リチャードの姿は見当たらない。


「なんて、おっしゃっているの?」

「勇敢なお嬢様に感謝の気持ちでいっぱいです」

「あら。いいえ」
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