おいしい紅茶を飲む前に
 王子は薫るような微笑みを浮かべ、メアリーアンを振り返り、その手に麗しのキスを残して、従者に傅かれ奥の部屋へと退場した。

その感謝の宿った手を、彼女は胸に当てて、夢をみるような瞳でこんなことを言ったりしたのだ。


「はー。王子様なのねー」


 ぱき、とそんな音で、フレディの中で何かが弾けたようだった。

すずいっと彼は、絨毯を踏みつけてメアリーアンのすぐ横に立ち、彼女の両手を取ると、


――なんと、その手にキスを――
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