おいしい紅茶を飲む前に
「メアリーアン」
想像していた以上に、呪文に近く聞こえる言葉だった。
なににつけても、とにかく想像なんかは超越してしまうものなのだと、シェリルは結論を出してみた。
こんなに、誰より長い時間を一緒に過ごしてきた私に、こんなことが起こるのね。不思議。こういうことも、ある。
幻よりもはるかにはっきりと、あの人の存在を感じるなんて。
冷めたカップを改めて口にと運びながら、魔法を使う恋する青年は、観念したようにつぶやいた。
「おばさまのケーキも、食べ頃だろう」