あいの手紙
その女の子はどこ吹く風で、私のことを知らないんだから、そのまま素通りして鏡の前で化粧を直し始めた。
い、いけない…
早くここから去ろうと、うるさい心臓を落ち着かせ、足早に逃げるようにその場から立ち去った。
ドアの外に出た私は、
今だドキドキし続ける心臓と速くなる呼吸を制御しようとゆっくり深呼吸した。
まさか、あそこで会うとは思わなかった分、覚悟が足りずにこの始末。
涼にももしかして会っちゃうかもだし…
その前に早く店から出てしまおう。
そう
思った矢先…だった。
「由良…ちゃん?」
少し低いけどまだかわいらしさの残った声。
ビクンと体が揺れた。
聞き間違うはずもない。
「・・・涼」
振り向いた先には
びっくりした顔で立ち尽くす涼の姿があった。