あいの手紙
先に口を開いたのは向こうだった。
「…何か忘れ物?」
ぽつりとつぶやかれた言葉に最初は頭がついていかなかった。
「あっ…えっとー…うん、数学のレポート取りに来たんだ。」
苦笑いを浮かべながら、さっきまで動きの止まっていた手を机の中に突っ込んだ。
ゴソゴソ…って…あれ?
・・・・アレ?
いくら机の中をゴソゴソ捜索しても目的のものらしきレポートが見つからない。
ついには膝をついて覗き込むように探してみるけれど、机の中には教科書とノートばかりで、肝心のレポートが入ってなかった。
「あははっ…やっぱりかばんの中にあったみたい。」
彼を見ると目を真ん丸くしていた。
ほんとなにやってんだか、
そういえば、かばんに入れた教科書の間に挟んでたっけ・・・
ほんともーやだ自分。
あのときもっと探してれば、こんな気まずい現場に来ることもなかったのに…
がっくりと肩を落としていると突然、川瀬君が肩を揺らして笑い始めた。
必死に笑うのを我慢してるように見えるけど・・・
急にどうしたんだろ?
「…中西の席・・一コ後ろだと思うけど…」
・・・・へ?
改めて前から席を数えてみる。
1、2、3・・・
今私が必死に引っ掻き回していた席は前から4番目。
で、実際の私の席は・・・5番目じゃんっ!!!
一個後ろの机の中には確かに中西ゆうとご丁寧に名前の書かれたレポートが入っていて…
ただただ、穴があったら入りたいな状況だった。