あいの手紙




夕方の海浜公園。



海辺に併設されたこの公園は、海上から打ち上げられる花火を見るには
ベストスポットだった。

そのため毎年人が混雑して押し合いへしあい。

場所とりするのも一苦労…なんだけど、ある一画だけ、人数制限をした特別スペースが設けられている。



そこは前以て配られた整理券がないと入れなくて。



だから、快適に花火を見ながら時間を過ごすことができる。



私が今立っているのは、その入口で。


涼は今か今かと待ち受けている。




時間は5時30分。


待ち合わせまではまだ
余裕で30分もある。




逸る気持ちを抑え切れず…とはいえ、




この30分は辛い。



幸せな待ち時間なんてほんの一瞬!

…なんてそんなの幻想だ。



私の周りはラブラブそうなカップルばかりで、

嫌でもその姿は目に入ってきて、一人で待つ私は隅っこのほうへと押しやられ縮こまってしまう。






今日は頑張って浴衣も着てきた。

涼に少しでも可愛く見られたいから。


少しでも惹きつけておきたいから。




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