あいの手紙
この異様な雰囲気にのまれてしまいそう。
今では完全に絡んできたときの勢いを失っている男たちに、
場違いにも騒ぎ立てる女たち。
今では私の存在なんてちっぽけなもので、途端にこの場は涼のオンステージ。
たまたまそこを通り掛かったおじさんも、この異様な光景を物珍しそうに覗き込んでいた。
今となっては
どうしたらいいものか…
困り果てていたその時だった。
ドーンという音と共に
夜空に浮かびあがる光の花。
キラキラと空に瞬く間に吸い込まれてゆく。
「あーっ花火!!!」
さっきまで夢中になって涼に話しかけていた女の子の一人が夜空を指差して声をあげる。
みなその時には既に空に浮かぶ大輪の火花を見上げていた。
「由良ちゃん、行こう」
すっかり花火にくぎづけになっていた私に
涼がこっそり耳元でささやく。
ぱっと顔を見れば優しそうな微笑みを見せてくれる。
男と女たちが花火に気をとられている間に、
そっと私の手を引いてくれた。
音をたてないように、こっそりと。
暗闇の中を二人
手をしっかりとにぎりしめて進んでいった。