あいの手紙
「・・・涼?」
何も語らない涼に
言い知れぬ不安を感じた私はそっと隣にいる彼に声をかけた。
花火大会も終わり、
帰路をたどる人の波が押し寄せてくる。
楽しいざわめきの中、
私たち二人の周りだけが静けさに覆われている。
結局、ただ1時間花火をみて終わってしまった。
あんなに昨日は涼と話し合いに行くんだと固く決意したのに
その決意も簡単に崩れ去っていた。
涼は私の呼びかけに手を強く握り返すだけで何も答えてはくれなかった。
手のひらから思いが簡単に伝わればいいのに、そんなこともなくて
ただ手を握る強さに応えるように私もその手をぎゅっと握り返した。
「由良ちゃんに謝らなきゃいけないことがある。」
そう唐突に言い出した涼の眼はどこまでも真剣で
ごくりと喉を鳴らすほどに私は緊張しきっていた。
「でもその前に今日は来てくれてありがと。」
にこっと笑う涼につられて私のほほも緩んでしまった。
「そ、それは・・・私も涼に誘われてうれしかったから。
それよりも今まで電話にもメールにもでなくて
・・・ごめんね。」
優しく微笑む涼をみて少し安心して
ひとまず謝ることはできた。
「いや、俺こそ由良ちゃんを不安にさせてごめんね。」
そう言ってふわっと私を包み込む涼の腕に
久々の感覚に、ただすがりつきたい思いをこらえて
私はこの雰囲気のまま言いたかったことを言ってしまおうと思った。