あいの手紙



…なに、この人。


「あなたは…どちらさまで?」



苛立つ気持ちを抑えて努めて平静に、聞き返す。


「あら~気になる?私は広人の同僚の茜よ。まぁ…ただの、同僚ってわけじゃないけどね。」


クスッと嫌みな笑いをみせ、茜と名乗る女は、再び部屋の中を探るように見渡す。


「広人なら、今お風呂ですけど。」


彼女の視界を遮るように、ぐっと体を張って入り口を塞ぐ。


自分の家じゃないのに…
なんだか、プライベートを覗かれているようで嫌だった。


「そうなのー」


それだけ言うと少し悩むような仕草を見せたと思ったら、すぐに妖艶な笑顔を浮かべた。



「じゃあ、また今度にするわ。そんなに急がなくてもいつでも会えるし。」


ふっと私を小馬鹿にしたような笑いが飛んでくる。


< 171 / 180 >

この作品をシェア

pagetop