あいの手紙
明日は日曜。
今日は、広人の待つ家まで歩いて帰る。
せっかくゆっくり出来る週末だし、手の凝ったご飯でも作ろうかな…なんて考えていた。
のに…
家にいるとばかり思っていた広人の姿がみえない。
テーブルの上にいっぱいに載せられた料理は、すっかり冷め切って。
手もつけられることなく、きれいに盛りつけられたまま。
時計の針は、とうに食事の時間を過ぎていた。
「…食べちゃお、かな」
いつもなら連絡を知らせるはずの携帯も、今はその機能を果たすことなくじっと身を潜めている。
そう考え始めていたときだった。
「だから・・・っ…って…」
なんだか、廊下が騒がしい。
こんな遅い時間に、一体誰なんだろう。と耳を澄ましていると、だんだんとその声が近づいてくるのがわかった。
「…ほら、・・・くわよ!」
「…っわかってるって!!・・少しくらい…いいだろ?」
「ってもう!…あと少しじゃない。」
どうやら、若い男女のようだ。少し高い声と、くぐもったような声が交互に聞こえてくる。
なんか、ラブラブでうらやましいんですけど。
帰りを待ちわびているのにもかかわらず、広人は一体どこをほっつき歩いてんだか…。
「ほら、カギは?ポケットかしら、・・・。」
だんだんとクリアに聞こえてくる女の人の声が、私のいる部屋の前でぴたりと止まった気がした。
ん?あれ。お向かいさんかな…?
さらにドアの向こう側の会話へと耳を澄ます。
「ほら、広人。しっかりしなさいよ。さっき言ったじゃない。
今夜はこれからなんでしょ?」
えっ?・・・ひろと…?