あいの手紙
反射的に
ばっと彼から離れようとした。
けれどその行動は彼とつながれていた手によって
たいした距離を稼ぐことなくとどまらせられる。
今更になって何を私は思い出そうとしていたのか。
ちょっとだけ怖くなった。
これからの未来を見たわけじゃない。
過去に経験した記憶を思いだしただけ・・・
頭の上の方から
黙ったままの私に向けられる彼からの視線をひしひしと感じた。
何か話しかけるでもなく、
ただその手はつないだまま。
見上げた彼の瞳の奥には
探るような
そして何か願うようなそんな影を見た。