あいの手紙



「でも、この家から出ていくってことは、ゆうとはもう会えなくなるってことだけは、子供心によく分かってて…何か、俺がいたっていう証を残したくて、誕生日にあのひよこをあげたんだよ。」





どこか遠くを見るように川瀬君は午後の晴れやかな空を見上げた。




「だから、今の苗字は母親の旧姓で、俺は"川瀬"になったんだ。」



そういうことなら、説明はつくけど・・・



「けど・・・」


・・・・・やっぱりなんだか、
今目の前にいる川瀬君と私の思い出の中のたっちゃんが一致しない。


釈然としていない私の顔をみて川瀬君はさみしそうな、
けれど表面には出さずに苦笑い、という表情をしていた。



「忘れてても、無理ないよ。もう、10年くらい前の話だし。」



そう言ってもらえると、いくらか私の心も楽になる。




けど、心のどこかでは


そんなんじゃいけない。

思い出して。


と頭をフル回転させてその記憶を探り出そうと



躍起になっている部分があった。



どうしても、何かを思い出したかった。









川瀬君とつながる何かを。











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