あいの手紙
「一番の・・・思い出はやっぱ、引越しの日かな。
あれは一番良い思い出であって、
それでいて一番忘れてしまいたくなるほどの悲しい思い出・・・
だな。」
引越しの日・・?
っていうと、
私、その日川瀬君に会いに行ってるのかな・・・?
彼はわたしのほうを見ることもなく、そのまま話し始めた。
「…結局誰に会うこともできないまま、この家から引っ越すのかぁって思って、一人寂しく準備が終わるまでトラックに乗って待ってたんだ。
この家とも今日でお別れか…ってぼーっとしてたら、外からさ俺を呼ぶ小さな声が聞こえて・・・
でも窓から覗いてもその姿がどこにも見えなかったから不思議に思ってトラックから降りようとしたんだ。
そしたらさ、ガンッって音と一緒に"痛いっ!"って声と鈍い衝撃が俺の手に伝わってきて…
何かにぶつかった!って思って急いで降りたら、そこに涙目のゆうがおでこを小さい手で押さえながらしゃがみ込んでたんだ。」