窓、ひらけば君と恋。
「そのことを言えば…悲しむ人が出るかもしれない…」


それに…松原君が離れていきそうで怖い…



「絶対に…言わないで」


「分かった…」


山本君はそう言うとハンカチをとりだした。


「どうして…ハンカチ?」


「涙でてるよ…ふかなくちゃ…」


そっと私の頬にハンカチをあてた。


せっけんの香りがした。



「涙…気付かなかった…」


「何があるのかは聞かないけど…桐原さんを知ってるんだね」


そう言うと立ち上がった。


「君が気になるって言ったのは嘘でもないから」


そう言って、屋上を出ていった。



猫みたいな、不思議なかんじ…山本君って。



でも、私の頭の中は松原君でいっぱいだった。



松原君と話がしたかった。


今すぐにでも沙織さんのことを話してあげたい。



でも、私には香奈も大切だから。



松原君…今どこにいるの?



気付けば、あと三分で昼休みが終わる。



私は急いで屋上をあとにした。




走っている途中で予鈴が鳴った。





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