窓、ひらけば君と恋。

揺れる恋

放課後、香奈が淋しそうな顔をしていた。


「どうしたの?」


「松原君が先に帰っちゃったんだ…一緒に帰りたかったのに…」


「香奈…」


松原君の心が読めない…
付き合ってるっていっても松原君は何もしてない。

一緒に帰ったり、手を繋いだり。

教室で話してるのも見たことない。


「彩夏。香奈と一緒に帰ってあげて」


「うん。分かった。香澄は?」


「私は一人で帰りたい気分だから…」


彩夏は分かったと頷くと二人で教室を出て行った。


何分か経って私も教室を出た。




夕日が沈みかけていた。


細長い影が道にうつっていた。



沙織さんが生きている…


このことを知っているのは私と山本君…


松原君が知ったら…きっと、沙織さんのもとへ行くかもしれない。


そう考えると怖くなる。



その時、後ろから声が聞こえた。


「お〜い」


振り返らなくても誰だか分かった。


「松原君!」


「なんだよ…なんか怒ってない?」



「怒ってない…」


松原君は私の隣に来た。


「最近話してないよな」


そうかな…


「やっぱり怒ってない?」


怒ってないよ…


「なんで黙ってんの」


「黙ってないよ!」


「怒ってんじゃん…言いたいことあるなら言えよ」


「私の気持ちなんて、どうだっていいよ…」


私よりも、沙織さんでしょ?


「どうでもよくない。気になる」


………


「単刀直入にいうけど…」


「おうっ」


「どうして、香奈と付き合ってるの…」



「……」



松原君の顔が曇るのが分かった。


「好きなの…?」


松原君は私から視線をそらした。


「…そっか。松原君も新しい恋を始めようとしてるんだって思った」


「蒼井…」


「でも…やっぱり、沙織さんは強いね…」


私は歩き始めた。


「待てよ…」


松原君が私を追いかける。


「もうこれ以上香奈を悲しませないで…」


< 49 / 62 >

この作品をシェア

pagetop