窓、ひらけば君と恋。
「あなたは…」


沙織さんは青空を見ながら言った。



「初めまして…私…蒼井香澄といいます」


「香澄さん…ですか。私は桐原沙織といいます」


丁寧に沙織さんはお辞儀をした。


「私…」


言葉が出ない…


「あの…私…」


言わなきゃ…


「私、松原英人の知り合いなんです…」



沙織さんの視線が私になった。



「英人の…」


その声は震えていた。


「松原君に会ってくれませんか?」


「……」


「ダメですか…お願いします…」


沙織さんはまた視線を青空に戻した。


「あなたが連れて来たの?」


「えっ…」


私は沙織さんが何を言ってるのか分からなかった。


沙織さんは屋上の出入口を指差した。




「松原君……」


そこには松原君が立っていた…



「どうして…」



私が固まっていると松原君は歩きだした。


私を通り過ぎ沙織さんの前に立った。



そして次に出入口には山本君が現れた。


山本君が呼んだのか…


だから緊張してたんだ…


「沙織……」


松原君は静かに言った。


しっかりと沙織さんを見ていた。



「久しぶり…英人…会いたかった…」



静かに時は流れていた…



「生きていてよかった…」


松原君はゆっくりと沙織さんを抱きしめた。


私はただそれを見ることしか出来なかった…


「松原君…どうして驚かないの…こんなに近くに沙織さんがいるのに…」


松原君は私を見ると、


「オレは、沙織が生きてるだけで嬉しい…


幸せだよ…」



「幸せ……」


そっか…よかった…



「沙織…元気になって…また一緒に遊ぼうな…蒼井とも」


「うん。わかった。早く元気にならなきゃ!」


「ぇえ…なんで私が…」



どうして私が二人と遊ぶの…


そんなことは無視して二人は話し出した。


「英人…また恋してね。私と一緒のときよりも、もっと幸せになって」
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