窓、ひらけば君と恋。
沙織さんは笑顔でそう言った。


「うん」


松原君も笑顔で答えた。



「行くぞ。蒼井」


そう言うと私の手をとった。

いつの間にか山本君も笑顔だった。



「そういうことか…オレは出るとこなしか」


そう言って沙織さんに挨拶をしに行った。


「ちょっと!」


私は手を振り払った。



「なに?」


「なにじゃないよ!なんでアッサリしてるの?あれだけ会いたいって願ってた沙織さんが生きてたんだよ?どうして…」


「そりゃあ嬉しいよ」


「なんで…」


「幸せだし、山本に呼ばれたとき心臓張り裂けそうだった…」


向こうでは山本君と沙織さんが話していた。



「いいじゃん…帰ろう」


そう言うと松原君は屋上をあとにした。


でも、一回振り向いて、




「沙織!!また明日、会いに来る!!」



沙織さんは大きく右手を振った。



「うん!香澄さんも!」



どうして…


私は不思議で仕方なかった。


せっかく会えたのに…


どうして…



さよならの扉は開いた…



でも扉の中は輝いていた。


笑顔があった…


松原君の幸せがあった…


そして、その扉の向こうに…



一つの見慣れた窓があった…




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