Two Strange InterestS
 私が出てくる時は会わなかったから、丁度行き違いになったのかもしれないけど……私の姿に気付いた彼女が、「ウザい」という声が聞こえてきそうな視線で私を見やる。

 薄暗いので色までは分からないけれど、相変わらずワンピースとカーディガンがよく似合う彼女は、長い髪をなびかせながら、私に近づいてきた。

 私を見据える目が、鋭い。

 戦闘の意思はなかったのだが、笑顔で対応しようとする上っ面を感情が拒絶した。

「……先輩と、付き合ってるんですか?」

 以前聞いたよりも低い声は、意図的に作っているのだろう。基本が高いから迫力としては薄いけれど。

「そうだ、って、言ったら、宮崎さんに不都合がある?」

 以前会った時よりも私に対する敵意が格段に強いのは、はっきり感じ取れた。
 同時に、疑問が一つ。

 どうして――彼女はどうして、こんなに私へ突っかかるのだろうか。

 そりゃあ、ずっと思っていた(であろう)彼の隣にいきなり私が現れたのだから、彼女から「この泥棒猫!」って言われてもしょうがないのだけど。むしろ言ってほしいくらいだ。そうすれば私も、もう少しスッキリするのに。

「……宮崎さんが私を嫌いなのはよく分かるけど、そんなに怖い目で見なくてもいいんじゃない? 前にも言ったけど、私の影響が彼にあったとしても……」

「先輩の隣に、もうオタクはいらないんです!」

 刹那、彼女の声が風に紛れる。

 だけど、その内容は……私が全く知らない情報だった。

「何言ってるの、宮崎さん……」

「貴女は知らないと思うけど……先輩の元カノも、ゲームが大好きな人だったんです」

 初聞きの事実だが、妙に納得してしまうのはどうしてだろう。まぁ、薫だし。

 はっはーん……林檎ちゃん、連続してヲタクに彼を取られたから躍起になってるんだな。
 そう思った私は、どんな言葉を返そうかと考えていたのだが、

「その元カノは、ゲームに夢中で……先輩のことなんか二の次だった」


 びくり、と、体が震えた。


「ゲームに夢中」「二の次」……一瞬、自分のことを言われた気がしたから。

 だから思わず、表情が固まってしまったんだ。
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