Two Strange InterestS
 彼に大樹、と、名前で呼ばれた彼は、「ふーん」と呟きながら近づいてきて、

「そうだな。早く俺と一緒に住みたいっていつも甘えるもんな、薫は」

 彼の隣に並ぶと、明らかに「誘っている」流し目で見つめる。

「い、いきなり何言ってるんだよ大樹!」

 どもって反論しながらも、完全に頬を赤らめている彼。


 ここまで見せつけられれば、確信するしかない。

 彼は、女性を恋愛対象として見ていない人になっていたのだ。

 自分の近くにそんな人間はいないと思っていた。

 まあ、彼の過去を考えれば否定出来ないけれど、そんな結論に達したくなかったのだ。

 しかも……絵になる。(笑)←彼女にしてみれば笑い事ではない。


「あ……あのっ! わ、私、お邪魔みたいだから失礼しますっ!!」

 2人の間からだだ漏れしているお耽美な雰囲気に、免疫のない彼女が酔ってしまうのも無理はない。

 脱兎よりも全力で走っていった(逃げていった)彼女の姿を見つめながら……薫は、いくらなんでもこんな「小芝居」に賛同してしまったことを、少しだけ、多分少しだけ、後悔したのだった。
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