Two Strange InterestS
 私が呆然と、彼が出て行ったドアを見つめていると、

「都」

 後ろから名前を呼ばれる。心臓が止まるかと思った。

 大袈裟な表現じゃない。2週間前にこんな悪戯を仕掛けると決めてから、私は……薫の彼女じゃなかったのだから。

 林檎ちゃんを完全に騙すため、私たちはこの2週間、学校以外で顔をあわせなかった。大学ですれ違っても……特別、会話を交わすこともなかった。(まぁ、会うこともほとんどなかったんだけど)

 芝居だって分かっている。企画したのが自分自身なのだから、文句は言えない。成功するって確信していたし、しなかった場合の対処法も考えていた。

 だけど。

 彼は振り返った私の手を掴み、そのまま力任せに引き寄せた。
 正直、腕は痛かったけど……でも、そんなこと気にならない。

「会いたかった」

 そう言ってもらえるだけで、その分の辛さも吹っ飛んでしまうってもんでしょ。

「こんな思いになったの……初めてなんだ。都に会えないのがこんなに辛いなんて、思わなかった」

「アリガト。そう言ってもらえるだけで嬉しいよ」

「だから……」


 だから。


 私はその言葉の先にあるのが、幸せな結末だと信じて疑わなかったのに。
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