Two Strange InterestS
 大学構内は、夕方になれば人の数が少なくなる。
 風が少し冷たい、図書館前のベンチ。互いにジュースを買って座っている私たち以外に、人影は、ない。

 大樹君も黙っていれば女の子が放っておかないので、正直、誰もいないのは助かる。これ以上変な噂を立てられたくはない。

「あ、そうだ。聞こうと思ってたんだけど……大樹君、綾美と知り合いなの?」

「あぁ、知ってるよ? 彼女は俺のライバルだからね」

 ライバル?
 言葉の真意がつかめない私へ、彼は至極分かりやすい説明をしてくれた。

「俺も同人作家なの」

「え、嘘っ!?」

「本当だよ。まぁ俺が描いてるのは、ある意味綾美と正反対のジャンルなんだけど……綾美とはイベントデビューした時期が同じで、最初の頃はよく隣のスペー スだったんだ。ただ、綾美はもう、結構な人気者になっちまったから……ココ2年くらいはまともに会ってないし、俺のことなんか覚えてないと思うけどね」

「でも、よく私が綾美の知り合いだって分かったね? 綾美から聞いたわけでもないんでしょう?」

 私が彼女と知り合ったのは高校生の頃だが、最近彼女と会っていない彼が、綾美と私に関する話をするとは考えられない。

「都ちゃん、薫に自分は綾美の知り合いだって言ったら、スケッチブック渡されただろ?」

「え? うん……薫、なぜか綾美の名前だけは知ってたから……」

 ……あれ?

 ちょっとまって。色々出来すぎてない?

 確かに彼はBL好きだけど、同人の世界まで深く把握しているわけではない。むしろ、同人に関しては表紙でジャケ買いするようなタイプだ。

 そんな彼が、綾美のことを知っている理由、それは、

「薫をあの世界に――BLの世界にそそのかしたの、実は俺なんだよ」

 彼の言葉でパズルがはまった。そんな気がした。
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