Two Strange InterestS
「え?」

 それはあくまでも、私が持っている本へ彼の注意を向けないために発した言葉であり、

「いや、さっきから躊躇してるみたいに見えたから。確かにそういう本、男なら買いにくいだろうし……あ、興味があるんだったら代わりに買ってこようか?」

 彼が見つめていたのは明らかに女性向けな書籍ばかりが並んでいる。今、男性向けの雑誌を持っている私だからこそ、その心境は分かる! お願いだから分かった気にさせて! そして私をレジへ行かせて!

「でも、沢城さん……」

「私、カウンターに取り置きもしてもらってるし。それに、今ならレジも女の人だから……さすがに男の人がレジだったら躊躇するけど、比較的この店って可愛い女の子がレジなのよね。だから、新谷君はもっと買いづらいんじゃないかな、って」

 私はもう、この店の中でなら、何も気にしないから。

「いらないなら私のお節介だけど、何か欲しくて棚を眺めてたんじゃないかなーって、思ったから。この時点で私たちってば立派な同類なんだからさ、遠慮なんかしなくてもいいよ」

 私の言葉に、彼は「それは、確かに……」と、苦笑いで納得し、

「じゃあ、悪いけど頼んでいいか? あ、勿論後からちゃんと……」

「分かってるって。ほい、どれですかー?」

 商談成立。とりあえず手近にあった店内用のカゴに自分の欲しい商品をそそくさと突っ込んだ私は、彼が手に取った本数冊の表紙を見つめ――


 表紙から漂うあまりにも美しい世界に、絶句したのである。
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