Two Strange InterestS
「お疲れさん。今回のは大分一気に進めてるみたいだけど……そんなに面白いのか?」

「んー……まぁ、内容としてはありきたりなんだけど、やっぱりツンデレはブームになってるだけのことはあるわね。ベタだけどギャップに胸キュンよ。キャラ同士の会話にテンポがあって飽きないし、声優さんもメジャーな人が名前変えて出演してるから、変な違和感もないし」

「そりゃよかった。大樹にも伝えておくよ」

 ちなみに大樹とは、彼の友人で……私という存在に興味を示し、ゲームを横流ししてくれる貴重な存在である。
 私はまだ会ったことないんだけど(専門学生で忙しいらしいみたい)、きっと会ったら何時間でも話が出来るんじゃないかな。

 私がプレイしているゲームは毎回、彼を仲介にして借りてきてもらった一品である。しかもほとんどがメーカー通販特典付の初回限定版。特典の小冊子などを読むのも楽しみの一つに増えて、嬉しい誤算だ。

「新谷氏、全部読んだの?」

 私が渡した小説を、彼はテーブルの上に積み重ねている。読書中の本は枕の横に積み重ねるのが癖らしく、この位置にある小説は「違うものと取りかえてほしい」という彼の意志を示しているのだ。読むのが早いのはお互い様。今日は奮発して5冊(とあるシリーズ全巻・外伝は除く)を渡したんだけど……もう全部読むなんて、侮りがたし。

 ちなみにこれらのBL小説は、私も自分の人脈を使って調達している本である。今日は普通の文庫本だが、新書サイズから同人誌まで幅広くレンタルOK。でも、「最近は花嫁がブームなのよ!」と、目をキラキラ輝かせながら言われても……私はどう言葉を返せばいいのやら。とりあえず驚いたけど。

 椅子の上から表紙を見つめ、やっぱり理解できない世界だなぁと、この扉を開くことがあっても、それはまだまだ遠い未来のことだろうと、しみじみ感じてしまうのである。

「……ねぇ、新谷氏?」

 私はいつの間にか、彼のことをそう呼んでいた。ちなみに彼が私を名字で呼び捨てなのは、私がそうしてくれと言ったからである。

「BLの魅力って、何?」
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