Two Strange InterestS
 椅子の上で頷く私に、新谷氏は「まぁ、あくまでも俺の価値観だけど」と付け加える。
 こういう人物だから、一緒にいて互いに窮屈じゃないんだろう。納得したのでこれ以上突っ込むこともなく、私は椅子からおりて立ち上がった。

「うー……でも、こんな生活続けてたら、肩がこるなぁ……」

 そのまま腕を伸ばして思いっきり背伸び。そんな私を新谷氏は無言で見つめている。

「ん? どうかした?」

「あ、いや……何でもない。何か食べるか?」

 私の質問から逃げるように冷蔵庫へ向かう新谷氏に少し疑問を抱きつつ……私はもう少し、柔軟体操を続けるのである。


 とりあえず、この奇妙な関係はもうしばらく現状維持に違いないのだけど。
 お互い、没頭できる趣味があることは……きっと、前向きにとらえれば素晴らしいことに違いないから。
 新谷氏買い置きのレトルトカレーを御馳走になりながら、彼が読んでいた小説をパラパラとめくってみて……私がこの新しい世界に目覚めるのは大分遠い未来になるだろうと改めて実感したのだった。
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