Two Strange InterestS
 しかし、その話を持ちかけたときの彼女といったら……いきなり何事かという疑いの眼差しはどこにもない。私たちが初めて出会ったのが高校入学当時、偶然席が近くて当時私も読んでいた某テニス漫画の話題で異常に盛り上がったのがキッカケだったけれど、その時以上の目の輝き。むしろ私が何事かと思ってうろたえたのだが、彼女がカバンからいきなり数冊取り出して一言、

「ただのBLには興味を示さなくていいわ! これを読みなさい!」

 以上。

 逆らうことの許されない命令形。
 聞けば私がいつかその世界に目覚めることを信じて、初心者向けの小説を持ち歩いてくれていたと言うではないか。

 ……いや、そこまでしなくていいから。

 元々彼女は親友で話の通じる私がギャルゲーに陶酔しているのがあまり面白くなかったのだ。「まぁ、あたしも嫌いじゃないけどさ……コッチの世界の方も、むしろコッチの世界の方が、面白いと思うんだけどな」という、彼女にしてみれば控えめな言葉を、会う度にさり気なく口に出しては、ため息をついていた。そんな彼女を受け流すのが、毎回の通過儀礼。

 だから最近、「本貸して」と一言メールを打てば電話がかかってくる。そこで読みたいジャンルなどを細かく聞かれ、すぐに時間と場所を指定され、いざ、待ち合わせ場所では、

「ハイ、持ってきたよー、例のシリーズ」

 周囲にはほとんど無警戒で、ヲタモード全開フルスロットルなのである。
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