Two Strange InterestS
 私も一応、学校では自分の趣味思考を隠蔽し、胸の奥に秘めて、大学では当たり障りのないように、エビちゃんとかもえちゃんとか(もえって言葉に反応してしまう自分がイヤだ……もえちゃんゴメン、可愛いから好き☆)、ドラマとか(見てないけど。テレビ雑誌の情報しか知らないけど)音楽とか(普段アニソンばっかりだけど)……頑張って周囲に話を「合わせる」のである。
 いつしか「ふーん」とか「へぇー」とか「ほぉー」などという感嘆符が多くなり、人の話を聞いてるフリは、前よりももっと上手になったと思うよ。

 ただ、綾美の前でエビちゃんの話に花を咲かせたことはない。私が櫻井さんの伊達眼鏡が好きだと言えば、彼女は福山さんの眼鏡の方が好きだという。私が神谷さんの話をすれば、彼女は小野さんの話題で返してくる。気がつけばそんな会話で数時間経過しているから世も末である。

 私と同じくケーキセット、加えてミニパフェまで頼んだ綾美が、周囲を一度だけ気にしてから、カバンの中へにゅっと手を突っ込んだ。

 彼女のトートバックから出てきたのは、青い袋。濃い青なので中身までは確認できない。勿論、某店長が熱い店の袋である。うん、あの店は聖域、私たちのユートピア。コレは少し褒めすぎた?

 ちなみに綾見の言う「例のシリーズ」とは、新谷氏が前回読んでいたシリーズの続編にあたる新作。うーん、私は表紙を見ただけで条件反射で拒否してしまったんだけど……ハネムーンのその後をシリーズ化しますか作者様。私たち読者に任せると、好き勝手に妄想して暴走するからですか?

「都もコレが好きなんて、さすがあたしの親友だわ。ねぇ、やっぱり先輩受けの後輩攻めなカップリングが一番でしょ?」

 彼女の生き生きした瞳が私に訴える。
 う、聞かないでほしいだって私は読んでないから。

 お昼過ぎのカフェで、ここから段々周囲からは理解不能な会話に興じる乙女が2人。
 何も言わないでください。別に悪いことしてるわけでもありませんから。っていうか邪魔するな部外者。
 綾美目当てで近づいてきた男を彼女自身が雰囲気と目で追いやり、私は相変わらずだなぁと思いながら、残っていたジュースを喉に流し込んだ。

 ただ、彼女が嬉々として私に意見を求めてくるのは予想できる。こういう事態に私だって何も備えていないわけではない。
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