Two Strange InterestS
「――鈍感なのはどっちだよ!」

 靴を履こうとした瞬間、背後から聞こえたのは――絶叫。


 壁が薄いマンションで近所迷惑という言葉を排除した新谷氏は、びっくりして振り向いた私に、今まで見せたことのない表情を向ける。
 眼鏡の奥、綺麗な瞳を……最大限まで吊り上げて。

 ……あれ? 私、もしかして地雷を踏んでしまった?

「新谷、氏?」

「俺だって学習能力がないわけじゃない。自分の行動がトラブルの引き金になってることも……今まで散々言われてきたよ。だから……やめようって、好きな子の前以外では自分の態度に気をつけようって、思ってきた。実践してるつもりなんだ」

 ――かちんと、きた。その言葉が今以上にふさわしい場面に出会ったことがないくらい、かちんと。

 実践してる? 誰が? 何を?

 前の言葉、そして先ほどの態度。

 彼の行動を思い返した私の中で、花火に似た怒りが大きく弾ける。

「じゃあ、さっきのはどう説明するのよ! 言ってることとやってることが違うじゃない!」

「だから察しろよ! 沢城、お前は全然気がついてないみたいだから指摘してやる。お前だって俺から言わせれば……そう、乙女ゲームの主人公体質だよ!」

「なぁっ!?」

 な……誰が、何だって!?
 予想外の反撃に、声が裏返った。
 呆然と立ち尽くして防御もしない私へ、激昂した彼が攻撃を続ける。
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