Two Strange InterestS
「沢城だから……フラグ立てたいなって、思ったんだからな」

「それは……私ルートに突入するってことだよ? リセット出来ないよ?」

「いいよ。このルートしか狙ってなかったから」

 からかうような口調。私は新谷氏を見上げてみた。
 眼鏡越しに見下ろす彼は、間近で見れば見るほど破壊力抜群というか、今までこんな人が近くにいて特に何とも思わなかった自分はやっぱり色々ダメなんじゃないかとか……思うことは色々あるけれども。

 ただ、出会った時から変わらないのは、私を見つめる優しい眼差し。
 少し呆れてるけど、でも、それは否定じゃない。「それでいい」って認めてくれているような気がして、肩の力が抜けるんだ。

 少しぎこちなく、彼の腕が私の背中に触れた。同時に私は体重を預ける。ただ、私は不思議と、さっきみたいに緊張することもなく……自分の手はどうしようか、そんなことばかり考えていて。

「沢城って、さ」

「ん?」

「意外と着やせするタイプ?」

「着やせ? それって……太ってるって言いたいの?」

「……いや、やっぱいい」

「?」

 ゲームでもたまに出てくる表現だが、自分に対して言われたことがなかったので意味がよく分からない。首をかしげる私に真意を告げることはないまま、新谷氏は静かに、私を抱きしめていた。

「沢城は……嫌じゃない?」

 この状況で確認する彼に、思わず失笑してしまう。
 だって、

「嫌だったら、とっくに抵抗してるよ」


 だから私も、いつの間にか……彼の背中に腕を回していたんだ。
< 56 / 160 >

この作品をシェア

pagetop