Two Strange InterestS
 彼が私の名前を呼んだ瞬間、全身が痺れて動けなくなったような感覚に襲われたんだ。

 見つめられると動けなくなって、視線をそらせなくなる。

 結局のところ……彼の言葉に導かれるままに、私は服を脱いで、それで……。
 知識だけしか知らなかった、知識だけが先行していた世界が、急に現実として私の前に姿を現す。そう、それはまさしく突然に最初からクライマックスって言うか、その……。

 ……認めるしかない。私を抱き枕に安らかな顔の彼に抱かれたことも、ぶっちゃけ初めて捧げちゃったとかいうことも、その他諸々、全て現実なのだ。

 普通の女の子なら、もっと取り乱すような場面かもしれない。
 だけど、

「……疲れた」

 どうしてだろう、色々乙女として恥らうべきかもしれないけど、どっと疲れが。

 うん、改めてゲームのヒロインは凄いよ……私、あんなに要求されても無理だもん。絶対無理。従順に従うなんてありえない。一晩中? 3回? 無理、絶対無理っていうか不可能。どれだけ体力とかその他とかが備わっていれば可能なのよそんなことっ! シナリオライター出て来い!! 絶対男でしょう!?
 実体験してみて強く思ったのはそういうことだった。

 ……私らしい、なぁ?

 私の右上、枕元に彼の携帯電話がある。時間を確認すると午前8時過ぎ、どーりで小腹がすいてるわけだ。

 っていうか……昨日、夕食は何を食べたっけ?

 うぅ、昨日は特に色々とショッキングな体験ばかりが集中したから、日常の些細なことが思い出せないっ!!

 でも……今日からはまた、日常が始まる。
 だけど、多分……昨日までとは少し違う、そんな日常が。

 抜け出せないので諦めて二度寝することにした私は……優しい笑顔で眠っている彼の顔に和んでから、軽く、目を閉じる。

 昨日、至近距離で真っ直ぐ見つめられたときの新谷氏は……もうしばらく、忘れられそうにない。
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