Two Strange InterestS
「……なぁ薫、本当に大丈夫なんだよな、その女の子」

 その日の夜、親友である大樹に「美少女ゲームを貸して欲しい」と頼み、その経緯を簡単に説明すると……電話の向こうにいる親友が、少し訝しげな声で問いかける。

 沢城がやってみたい美少女ゲームがあると聞き、真っ先に浮かんだのは大樹だった。案の定ソフト名を告げると「まぁ、俺なら持ってるけど……」という返答。俺にはどんなゲームなのか分からないけど、大樹が持ってるってことは、それなりに有名で面白いソフトなのかもしれない。聞いても分からないから聞かないけど。

 ただ、

「えぇっと……沢城さん、だっけ? まぁ、薫の前でそこまでぶっちゃける女の子が、最初から妙な下心を持っているとは考えたくないけど……杏奈ちゃんのこともあるし、気をつけろよ?」

「そう、だな……」

 奴からの忠告に、思い出したくない記憶が溢れようとする。


 まだ、そう遠くない過去。あの時、俺の前から離れていった彼女――大好きだった杏奈の泣き顔が、俺の知っている最後の彼女で……。


「薫?」

 大樹からの声に我に返り、「じゃあ大樹、悪いけどさっき言ったタイトルを頼む」と電話を切った。
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