Two Strange InterestS
 私は涙が落ちそうな顔を見られたくなくて、立ち上がった。
 いまなら我慢できる。洗面所で顔を洗って、一度気持ちをリセットして、普段どおりの自分に戻ることが出来る、そう思ったから。

 だけど、

「ねぇ、都……行かないで」

 呼び止められ、次の一歩が踏み出せなくなる。
 どうして、こういう絶妙なタイミングで(しかも名前で)呼び止めるんだろう。素直に従ってしまう自分に失笑しながらも、このまま立ち止まっても涙しか溢れないと判断した私は、「ちょっと飲み物取ってくるよ」と、振り向かずに断った。

 たけど。


「――行かないで」


 今度は、声がさっきよりも近くから聞こえて。

 振り向いて確認する暇もなかった。

 いつの間にか立ち上がった彼が、私を後ろから抱きしめたから。
< 94 / 160 >

この作品をシェア

pagetop