Two Strange InterestS
「ひぇ!? あ……ダメだよ! まだ安静にしてないと……!」

 っていうか、いつの間に立ち上がれるまで回復したんだ!?
 自分にとって都合のいい展開に今度こそ色んな感情が沸騰寸前。熱いのは熱にうなされた彼の体じゃない。完全に赤面した私自身だ。

「新谷氏!?」

「……薫、が、いい」

「え?」

 耳元で囁いてくれた言葉に、私は目を見開く。
 申し訳ないけど、信じられなかったから。

 彼は、驚いて言葉を失った私を、もう一度、強く抱きしめて、

「名前、で……呼んで。都なら、俺……大丈夫だから。大丈夫になる、から……だから……」

 だから、何よ。

 それを伝えるために、わざわざ立ち上がったわけでもないんでしょう?
 回された彼の腕をそっと握って、次の言葉を待った。

「今は何も食べたくない、から……だから、お願い。都、どこにも、いかないで……」

「そんな遠くには行かないよ、ただちょっと飲み物でも――」

「今はいらないから……都、俺も都って呼びたい。都にも名前で呼んで欲しいんだ……ダメ、かな」

 途切れ途切れになる言葉。首筋にかかる彼の吐息が熱い。服用した風邪薬が効いてないじゃないかと思いながら、私は一度だけ頷いた。

「ダメなわけ……ないじゃないっ……」

 キミがそう言ってくれるのを、待っていたんだから。

 泣き顔を……憤りや嬉しさでこぼれた涙を見られなくてよかった、と、心から思う。

「ん、分かった。私はどこにもいかないから……でも、何か欲しいものがあったら言ってね? 本当に何もないの?」

「……攻め属性の白衣の先生」

「いや、それは私にも無理な注文だわ」

「……じゃあ、都でいいや」

「じゃあってどういうことよ!?」

 やっぱり殴っていいですか神様。
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