誰かのものにならないで
「ああ…。俺、先月結婚したんだよ…。メールでも伝えたよな?」




優しい笑顔で
私を見つめている
その優しい笑顔は
皮肉だった
ちょうどその頃は
勉強にあけくれていて
お兄ちゃんからのメールを見る暇がなかったからだ





私は泣きたいのをこらえて



「もっもちろんよ…結婚式に行けなくて、ごめんね?」

「いや、イイヨ?お前は留学中だったんだし。」




優しい笑顔で見つめながら
彩の荷物を持った。




「さあ、タクシー待たせてあるから、行こう」





「うん…」




そして
二人を乗せたタクシーは
進み出した
ちょっと気まずい雰囲気が

拓也は疲れているのだろうと思い
彩に話しかける様子がない
私の心の中は
お兄ちゃんへの恋心が
うすれていくようだった。

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