半径1㍍禁止
「もう、なんなの…?」
これで、三回目。
いつものように反抗する気もない。
ただ、ますます泣きたくなってくる。
「泣くほど、いや?」
桐斗が、私の頬を撫でる。
その顔は、少し悲しそうで。
「…嫌な事があったの。ほっといて。」
つい、控えめになってしまった。
そう言って、立ち上がった。
「ほっとけない。」
そんな事を言われて振り返ると、気づけば桐斗の腕の中だった。
「ほっとけないよ?藍衣だからね。」
桐斗が言った。
藍衣だからね、って…意味深だし。
優しく抱きしめられて。
頭を撫でられる。
いつもなら、
馬鹿にしてんの?とか言うんだけど…。
もう、そんな余裕さえなかった。