半径1㍍禁止
「ゆりか…?」
傘もささずに、泣きながら走ってくるゆりかがいた。
「き…りとっ…。」
ゆりかが、俺の前で立ち止まる。
――ザー…ザー…
雨は、どんどん激しくなった。
とりあえず、傘の中にゆりかを入れてあげた。
「どうした?」
ゆりかは、ずっと泣いている。
「…たくみがっ…。」
たくみ…?
彼氏の名前か…。
「デパートに行った帰りに…、怖い人達にっ…絡まれて…。」
「…私をっ…かばってくれてっ…。
逃げてって…。」
ゆりかは、もっと大泣きする。
「どこそれ。」
「…隣町のっ…公園…。」
凡人のくせに、何してんだか…。
「行ってくるから。」
傘は、ゆりかに持たせて走った、俺。
――バシャバシャっ!
結局、俺もガキだった。