半径1㍍禁止




「…………裕……?」



思わず名前を呼んだ。






「行けよ、藍衣。」




優しく温かい声が返ってきた。


けど、あの笑顔は向けてくれないんだね。


裕は、背中を向けたまま。




「藍衣の気持ち、聞いて気づいた。
…俺が、無理やり藍衣を縛りつけてたんだな。」



――そんなことないよ。



そう言ったら、また迷惑になりそうで。

裕には見えないのに、ただ首を横に振る。



「けど、嬉しかった。
俺を必要としてくれて。」



あの時を思い出した。


桐斗と喧嘩になって、真っ暗な中帰った時。

裕は、私を見つけて言ってくれた。



『俺には、藍衣が必要なんだよっ…。』



私にだって、裕が必要だよ。

今更、裕がいない人生なんて考えれないよ。


< 497 / 504 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop