ドールタウンミーティング

今日の日報

このバイトをする上で最も気をつけなければならない事。

それは叔父へのアピールだ。

如何にして真面目に留守を守っていたかを報告しなければならない。

当然ながらニンテンドーDSで暇を潰している姿なぞ論外。


いつ帰ってきても大丈夫なよう、準備は怠りない。
RPGのようなゲームは避け、この場ではパズル系ゲームをやるようにしている。

以前、戦闘中に叔父が帰宅した時はそのまま本体を閉じ、スリープ状態にしておいたのだが、電池切れでそれまでの苦労が無駄になるという悲しい思いをした。

そんなわけで今はレイトン教授をやっている。こまめにセーブしていれば突然電源を切っても問題ない。

叔父は口うるさくはないがその日に何をしたかはしつこいくらいに報告を求めてくる。

電話の本数、内容、空き時間の使い方、さらに昼ご飯に何を食べたかまで。

昼ご飯は出前を頼み、あとでバイト料と一緒に支払ってくれる。

だいたい何を頼んでも文句は言われないけど。


一日一万がここのバイト料だ。

内容にしてはかなり良いバイト。

だからこそ、変なところは見せたくない。真面目にやっているように見せる、これはアタシの生活の維持の為にも大切な事なのだ。

そんな事を考えているうちにドアのキーを回す音が聞こえた。

急いでニンテンドーDSの電源を切り、鞄に放り込む。

叔父の著書を開き、難しい顔を作る。

「ただいま。いやあ、疲れたなあ」

叔父が事務所スペースのドアをあけ現れた。
このマンションは叔父の自宅も兼ねており、リビングと寝室は完全な叔父のプライベートスペースだ。しかし、帰宅すると叔父は必ず一番に事務所スペースに顔を出し、アタシの報告を聞く。

「叔父さん、お疲れー。講演会、どうだった?」

「うん。大盛況だな」

「良かった。前回は5人でしょ?」

「あれは事前告知がうまくなかった。うちのホームページだけでよく5人きたもんだよ」

本当に道楽もいいとこだよ。

叔父は寄付(主に自殺者の遺族)に生活している。講演会なんて言っても人が来ないから狭い会場を借りるだけで毎回赤字だ。
< 25 / 29 >

この作品をシェア

pagetop