加納欄の想い シリーズ12
「……し、下着も買いたいし、恥ずかしいでしょ?試着の時にフェイさんがいたら」

「わかりました。試着の時は、外にいます。決まったら、おっしゃってください」

「ありがと・・・ございます」

 なんとか、フェイさんを外へ追いやった。

 フィッティングルームは2階にあった。



小窓を開ければ、なんとかなりそう……?



 今しかなかった。

 絶対に見つかってはいけなかった。

 もし。

 万が一にも、見つかったら、その時は。

 遼さんの最期を思い出した。

 あたしは、頭を振ると、小窓から身をのり出し、下に誰もいないことを確認すると、体を外へ投げ出した。

 不思議と怖さはなかった。逆に、降りれる。とさえ、思った。なんでこんなことが出来るのかさえも、わからなかった。

 あたしは、小窓からジャンプし、1階の芝生に着地した。ダッシュし、金網を乗り越えた。



とにかく(>_<)



遠くに逃げなきゃ!



 あたしは、脇目もふらずに、走っていた。

 勢いよく走りすぎて、人とぶつかった。

「ご、ごめんなさい!急いでて!」

 あたしは、相手を見た。

「欄、鬼ごっこでもしてるんですか?」

 愕然とした。

 目の前には、師範が、立っていた。

「フェイ、欄を外に出すな。と言いましたが?」

 あたしは、後ろを見た。

 フェイさんが、もぅ近づいてきていた。

「ち、違うの!私が、勝手に出たの!」

 頭の中に、遼さんの記憶が戻った。

 あたしの顔が、強ばった。

 あたしは、師範に謝った。

「戻りますよ。記憶がないのに、外にでても、何にもわからないでしょう」

 師範に、肩をつかまれた。

 ビクッとした。エスコートとは程遠く、まるで脱獄者をとらえて、連れ戻しているようだった。

 あたしのわきを、1台のパトカーが、通り過ぎて行ったが、あたしは、気にすることもなく、師範にホテルへ連れ戻された。

「欄、中国へ着くまでは、大人しくしていなさい」

 ホテルの部屋に着くと、孔明師範は、フェイさん達を部屋の外へ出し、鍵を閉めた。

「む、向かいの洋服屋さんに、か、可愛いのがあって……」

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