加納欄の想い シリーズ12
 遼の声だった。


最悪・・・。


カンベンしてよ・・・。


 あたしの頭上で書類が散乱し、蛍光灯やら観葉植物が倒れていった。

「欄!出て来ないなら、外の見張りの奴、殺っちゃうよ。せっかく殺さないであげたのに。大山さんもいるんでしょ?下手に動いたら、わかってるよね」

 相変わらずの物言いにムカついてはいたが息をひそめてるあたし達に、遼は楽しそうにさらに話した。

「あんまり殺気立てると気配で感じとるぞぉ」

しびれを切らして大山先輩が、遼に向かって怒鳴った。

「何が目的だ!」

「わかってっしょ、俺が来たってことは、欄をもらいに来ただけだよ。タイムリミットだってさ。師範からの伝言」


タイムリミット・・・?


あたしを、中国へ、本気で、連れ戻すつもり・・・?


「欄、手間かけさせんなよ。これ以上被害出したくなかったら、さっさと出てこいよ」

 見えてはいないけど、かなりの惨劇だと思う。

 あたしは、武器になるものもってないし、先輩達も、署内にいる時は、拳銃を外している。

 どう考えても、ブが悪かった。

「遼!」

 あたしは、遼に呼び掛けた。

 その一瞬で、銃声が止み、更に、あたしの前に遼が、現れた。そして、立ち上がれるように手を差し出す。

「みぃつけた。ほら、立てよ。怪我してねぇよな」


心配すんだったら、マシンガンでぶっぱなさないでよ。


「大丈夫よ」

 あたしは、遼の手を借りずに、立ち上がった。

 部屋の中は、ひどい状況だった。

「あと隠れてる人達も、立ってもらおうか」

 遼は、そう言いながら、あたしの腕を取りながら、南署の玄関の方へ、少しずつ移動して行った。

 大山先輩が、ゆっくりと立ち上がった。

「欄っ!」

 あたしが、遼に捕まってるのを見て、大山先輩が、声を発した。

「要、欄を縛っとけ。あと一人かな、立ち上がる人、まだいるでしょ?気配でわかってんだよ」

 遼は、そう言いながら、大山先輩の方へ歩いて行った。

 要と呼ばれた若い男は、あたしの手を取り、あたしの手首をグルグルと、持参のロープで巻いた。

 高遠先輩も、立ち上がった。

 遼は、大山先輩の前へ立つと、いきなり殴った。

「大山先輩!」

「仁!」

 大山先輩は、よろけたが、倒れはしなかった。

「きかねぇよ」

 大山先輩は、遼に殴りかえそうとして、やめた。

「へぇ」

 と言うとさらに、遼は大山先輩にパンチをいれた。


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