加納欄の想い シリーズ12
「欄っ!」

 大山先輩が、怒鳴った。

「孔明師範と話しつけてきます」

「欄!話してわかる奴じゃないことくらい、わかってるだろ!!」

高遠先輩も賛成はしなかった。

「・・・・・・」

「行くな!」

 あたしの瞳には涙がたまっていた。

 あたしは、首を左右に振った。

 先ほど倒した男達が、起き上がれるようになった。

 これで、終わりだった。

「前で縛ってどうすんだよ。ヤラレルに決まってんだろ」

 遼が、要に文句を言った。

「欄、行くぞ」

 あたしは、遼に促されて遼の所へ歩いた。

 当て身をくらい、あたしは気を失った。
 
 遼は軽々とあたしを担いだ。

 その様子を見て大山先輩が。

「欄!遼、てめぇ」

「欄に救ってもらった命なんだから、大切にすれば?そっちの刑事さんも、つけようなんてこと考えんなよ。ま、これで欄とはお別れだけどな。元々そっちの世界にいる人間じゃなかったからな、返してもらうわ」

 そう言って遼は、南署を出て行った。

 出来事は10分とかかっていなかった。




 あたしが気がついた時は、ワンボックスカーの車の中で、右側に遼、左側に要に挟まれていた。

 先ほど縛られていた縄は、ほどかれていた。

 車は、停止していた。

「目が覚めたか?」

 そう言うなり、あたしのホッペにキスをした。

 あたしは、遼を叩いた。

「大山先輩は?大丈夫なんでしょ?助けてくれたんでしょ?」

 その質問に対して、返答はなかった。返答がない。ってことは、とりあえず命までは取らなかったとみていいだろう。

「お前に話しがある」

「あたしにはナイ」

「俺と組まないか?」

「だから・・・」


組・・・む?


遼・・・と?


「ジョーダン」

 あたしは、断った。

 あたしに、何のメリットもない。

「俺は、欄が手に入れば、どんな未来でも生きてくさ。でも、必ず、師範の邪魔が入る」

「孔明師範を崇拝してんでしょ?」

「崇拝じゃない。命の恩人さ。欄だって同じだろ?でも、お前の事は別さ。お前は、誰にも渡さない」

 遼が、真っ直ぐあたしを見た。

 遼の視線を感じつつ、遼の顔を見れないでいた。

 遼は、あたしの手首を強引に掴んだ。

 あたしは、振りほどこうともがいたが、遼の力強い握力に負けていた。


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