加納欄の想い シリーズ12
「・・・行くわ。孔明師範に、私を売るために襲撃しかけたんじゃなかったの?裏切るの?」

「裏切っちゃ、いねぇ。仕事と女は別もんさ。仕事に対しては、孔明師範に忠誠を尽くすさ。ただ、お前に対してだけは例え孔明師範だろうが、渡さない。他の野郎にもな」

 あたしは、答える事ができなかった。

 ただ、孔明師範と、警察内部の人がツルンデルのがわかった。

 どう転んでも、孔明師範が警察に、いい結果を与えることがナイことだけは、確信がもてた。

 車から降りるとあたしは遼に連れられて、瓦礫ばかりの建物に入って行った。

「遼、ここどこよ。すぐそこは海だし。隠れようにも・・・」

「隠れることなんてねぇさ。来た瞬間に仕留めればいい」

「馬鹿なこと言わないで、それが出来たらとっくの昔にやってるわよ」

「それもそうだな」

 遼が、笑った。

「車の中の・・・要っての戦力になるの?」

「分かりきったこと聞くなよ」

「なら、なんでくっつけてるのよ。裏切ったりでもしたら」

「いや、アイツラは、直接俺が育ててる奴等だ」

「孔明師範相手にイチから?気が遠くなりそうな話し・・・」

 あたし達は、建物を調べた。

「そうでもないさ。けっこう面白いぜ。孔明師範の気持ちがわかるぜ」

「・・・」

 何か言おうとしたけどやめた。

 近くでパトカーの音が聞こえたけど、通り過ぎて行ったようだった。


先輩……。


あの後すぐに病院行ったかな。


 ピアスの発信器は作動させてある。

 ただ、今回は、先輩達の応援に期待はできなかった。

 とりあえずは、孔明師範の相手を知るのが、先決だった。その為だけの時間稼ぎだ。

「来たぞっ」

 遼が小声で話した。

 1台の黒塗りの車が来た。何秒後かに、白い車が到着した。

 先にドアを開けたのは、白い車だった。

 中から現れたのは、孔明師範だった。

 相変わらずの長髪を後ろで結わえ、黒いロングコートを見にまとっていた。

 あたしと、遼は、息をひそめた。

 そして、しばらく待つと、黒い車から人が、出てきた。あたしは、その人物を見ようと目をこらした。

 紺色のスーツを着ていた。

 視線を顔へ向けた。

「あの人は・・・」

 思わず呟いてしまった。


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