放浪カモメ
やはり最低なことをしてしまったのだろうか、と不安そうな顔をした鴨居を見て女はクスリと笑う。
「なーんてね、大丈夫だよ。カモ君、"する"前に酔っ払って寝ちゃったから。」
「えっ…あ、そうなの?良かった。」
酒の勢いで見知らぬ女性と一晩を供にしただけでも問題なのに、男女の関係になってしまうのなんて言語道断である。
鴨居の記憶にはないのだが、とにかくそうなることだけは避けられた様で鴨居は安堵の言葉をこぼしていた。
「良かった……?」
しかし、相手にしてみればそうもいかない。
受け入れる覚悟ができていたのに、当の相手が寝てしまったのだ。
これはもう侮辱に等しい行動だった。
そんな女の様子に気付いた鴨居がベッドの上で土下座をして謝る。
「いや、本当にゴメンなさい。」
下げた頭を少しだけ上げて女の表情を伺うが。まだ少し不機嫌そうだった。
「いいけどね、別に。そんなことより朝食おごってよ。そこで昨日の話もしてあげるから。」
そう言うと女は鴨居の前で恥ずかしがる様子もなく服を着始める。
よくよく考えると今は鴨居も裸の状態だった。
ベッドの上で裸で土下座する大学三回生……哀れ。その一言に尽きる。