放浪カモメ
不器用な恋の唄
夕暮れに霞む光が、鴨居と岡崎のいる部屋を暖かく照らしだす。
岡崎は部屋に入ると扉をゆっくりと閉めた。
黙って立ちすくんでしまう岡崎を疑問に思った鴨居。
「早苗ちゃん…どうしたの?」
鴨居に優しくそう聞かれると、岡崎はうつむいたままに話し始めるのだった。
「さっき……穂波先輩に告白されちゃいました。」
「新田くんが……。早苗ちゃんは新田くんのこと好きじゃないの?」
岡崎は左右に首を振ると、消えてしまいそうな声で答える。
「穂波先輩は凄く優しくて、私なんかには勿体ないくらい格好よくて……」
時折あいづちを打ちながら鴨居は岡崎の話を聞いていた。
鴨居はまだ、これは後輩の恋愛相談なのだろう。くらいにしか思っていなかったのだ。
「だったら……付き合ってみても良いんじゃないかな?」
そう言われた岡崎は急に、泣きそうな目で鴨居を睨み付けると、ボロボロと涙をこぼしはじめた。
「なんで……何でカモ先輩は分かってくれないんスか?」
沈んでいく太陽が、事態を飲み込めていない鴨居の困惑した表情を朱色に染めていく。