放浪カモメ
「え?ゴメン、オレよく状況が理解できてないんだけど、分かってくれないって――何が?」
岡崎は握った手を小さく震わせる。
そして、深呼吸をして叫ぶように言うのだ。
「私はカモ先輩のことがこんなにも好きなのに!!何でカモ先輩は気付いてくれないんスか!?」
頬も顔も耳までもを赤くして、岡崎はまた下をむいてしまった。
「えっ…?」
恋愛相談に来たと思っていた後輩からの、突然の愛の告白に鴨居はますます困惑してしまう。
岡崎はそんな鴨居を見て、悲しそうに涙を流した。
小さな手で涙を拭うが、涙は大きな粒となって床に落ちていく。
「私、ずっと前からカモ先輩のこと好きだったんです。カモ先輩の隣にいると、ドキドキして。」
岡崎はときどき、しゃくりながらもその思いの丈を打ち明けていく。
ゆっくりと、ゆっくりと沈む太陽が今にも遠くのビルの中に隠れようとしていた。
「先輩の笑顔を独り占めにしたい。って……先輩と手を繋ぎたい。って、そんなことばかり考えてて。」
鴨居の心臓が不器用な音をたてる。