放浪カモメ
その時、ふと鴨居の頭にある言葉が過るのだった。
『自分への好意を持ってくれる人って世界にどのくらいいるのだろう?
もしかしたらほんの数人で、その人を逃してしまったらオレは独りになるんじゃないかって……』
言い得ぬ不安が鴨居を支配していく。
(オレは早苗ちゃんのこと"嫌いじゃない"。だったら別に付き合っても良いんじゃないか?)
独りになりたくない。という感情が鴨居の頭を混乱させていた。
そんな時に、ある女性からの言葉が胸の辺りから聞こえたような気がして、鴨居は正気を取り戻す。
『今度は本当の恋をして幸せになってね。』
(そうだ……何を考えてるんだよオレ。また同じ間違いを、真希にしてしまった間違いを犯すところだったじゃないか。)
鴨居は自分への怒りをとりあえず胸の内にしまう。
そして改めて岡崎へと向き直すと、できるだけ傷つけない言葉を選ぶようにして言う。
「ありがとう早苗ちゃん。凄く嬉しいけど……オレは君と付き合うことはできないよ。」
岡崎の潤んだ瞳から、徐々に光が消えていった。
鴨居は胸が締め付けられような感覚に陥ったのだが、言葉を続ける。