放浪カモメ
しばらくボーッと空を見上げていた佐野。
ふと、教え子の相談に乗っていたことを思い出す。
「あー、あんたがどうすればいいか?だったな。」
鴨居は無言で頷く。
「うん……普通に接してやれば良い。ただ普通にな。」
佐野はしゃべりながら、車輪の付いた椅子を手前に引くと、腰を落とした。
「先生オレ……」
真面目な顔をしながら、時折下を向く鴨居。
佐野はパソコンに向き合いながら、淡々と言う。
「何を複雑な顔してやがる、人から好意を持たれて告白までされたんだぞ?喜べ。誰もが好きなだけ経験できる様な事じゃあない。」
最後にニッと笑って、それっきり佐野は言葉を発しなかった。
鴨居は空を見つめる。
いろんな人からのいろんな言葉が、頭から離れないでいた。