放浪カモメ


しばらくボーッと空を見上げていた佐野。

ふと、教え子の相談に乗っていたことを思い出す。

「あー、あんたがどうすればいいか?だったな。」

鴨居は無言で頷く。

「うん……普通に接してやれば良い。ただ普通にな。」

佐野はしゃべりながら、車輪の付いた椅子を手前に引くと、腰を落とした。



「先生オレ……」

真面目な顔をしながら、時折下を向く鴨居。

佐野はパソコンに向き合いながら、淡々と言う。

「何を複雑な顔してやがる、人から好意を持たれて告白までされたんだぞ?喜べ。誰もが好きなだけ経験できる様な事じゃあない。」

最後にニッと笑って、それっきり佐野は言葉を発しなかった。

鴨居は空を見つめる。

いろんな人からのいろんな言葉が、頭から離れないでいた。
< 108 / 328 >

この作品をシェア

pagetop